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水族館 [詩]





   水族館



ぼくらの眼のま下に水族館がある。

深々とたたえた水をのぞかせて。

眼はその深みの上に張られた

すどおしのガラスだ。



素ガラスには外の空が映え 木の蔭が落ち

時としては野良犬が横切っていくこともあるが

それらの下に魂の海水はたたえられ

さまざまな裸(はだか)のイメージや「思い出」が

魚のように棲んでいる。



水面に近いところには

夏や朝が

そしてついさっきすれちがった人影が

中ほどには

きのうやおととい通ってきた世界の夕空が

一番深くには

遠い過去の中の少女の顔が………。

水の途中(とちゅう)にじっととまって動かない魚や

物かげにかくれひそんでいる魚や

水面近くを涼しく泳いでいる魚のように。



どのイメージも「思い出」も濡(ぬ)れて

水を透したむこうに鮮かに見えるが

水の深みから汲み上げると消えてしまいそうだ。











 「中学生文学」 1968(S43)年 9月号



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