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現代的と伝統的   (その5) [評論 等]





 右の二詩集の他に今月私が読んだもののう

ちでは、稲田さき子詩集「まち」と堀正幸詩

集「ブリキ屋の歌」に注目した。なお二、三

カ月前に読んで論評したいと考えたものに若

林肇詩集「地の傷」があった。これらの詩集

についても具体的に論評すべき責任を私は持

っているが、今月も紙幅をなくしてしまっ

った。そこで佳作名を挙げ、それぞれの詩集から

一篇ずつ引用し紹介することで私の責任の一端を

果したい。

 稲田さき子詩集……「わたしたちは神を持

たない」「蝶について」「ベトナムのうた」「母

のゆめ」「母に」「鳥の報告」「埋葬」「象」「落

日「地平の村」「象」「黒人兵のためのレク

イエム」

 堀正幸詩集……「がんがんや」「夏・はり

つけ」「夏・だんだら」「屋根のうえの夏」

「秋」「朝の掌」「この顔が」「墜ちる」「伊吹

山」「尻尾を噛む」

 若林肇詩集……「ぶどうの葉」「帰ってく

るもの」「地の傷」「春の堤」「果樹の憩」「屋

上」「五月」





   埋葬

             稲田さき子



 三昧屋への道は遠く

 真昼だというのにそのあたりは

 なぜか紫色にけむって

 墓掘り人は

 昔土葬したひとの骨と歯が

 くわのあいだからこぼれ落ちたと

 声高にはなした

 野辺送りのひとびとはそのために

 少し列をくずし

 あたりはいっそう紫色にけむった

 一年病んで死んだ母の骨は

 もろくくだけて

 あ この骨は

 すぐ大地にもどるだろう

 それから赤く

 やっぱりまんじゅしゃげは咲いた

 母のいなくなった家に

 もう産まれてくる子は居ず

 キラキラ光る滅亡の頂点で

 老いた父がゆっくりと

 子守唄をうたう





 夏・はりつけ

            堀正幸



 ぼくは

 まいにち 磔にされる

 トタン板と 太陽のひかりに挟まれて

 うしろから 灼きつけてくる太陽

 まえから はね返ってくる太陽

 今日トタン屋根のうえで

 太陽を 消してやった

 コールタールで 

 そのとき

 ぼくの影が消え

 ぼくも消えてしまった





  五月

             若林肇



 風に吹かれて

 あなたたちはむこうへいく

 髪を両手でおさえ

 しなやかに背をそらせ

 ふりかえりしな笑顔をみせて

 いつもこう五月は

 彗星のように近づいてきては

 おとめたちを連れ去る

 季節のすすみに

 おいていかれた大人たちが

 何かしきりに言いあっている。











   「詩学」 1969(S44)年 10・11月合併号



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